2013年09月02日

関係各位に、速記官制度に関する要請行動

「守る会」では以下の要請行動を、日弁連並びに全国の単位弁護士会に対し行っています。
更に、同様の趣旨で、衆参の法務委員会委員各氏に対しても行います。
関係各位のご協力、ご支援をお願いいたします。

各単位弁護士会 御中                       2013年8月
   裁判所速記官制度を守り、司法の充実・強化を求める会
                   会 長  鶴 見 祐 策(東京弁護士会所属)   
   最高裁判所や貴会と対応する裁判所に下記を要請してください
    〜速記官の養成再開に向けて〜
                             記
1 公判廷等での供述記録は原則として速記録とすること。
2 裁判員裁判はじめ、公正・迅速な裁判の実現に資するために、供述記録を即時に交付できるシステムを構築すること。
3 裁判所法一部改正法に対する附帯決議(衆議院法務委員会2004年3月12日、参議院法務委員会2004年3月30日)をふまえ電子速記タイプライターの官支給実現を図り、裁判所速記官の執務環境を整備すること。

                要 請 内 容 の 説 明
速記官制度をめぐる経過と問題

1 法廷速記の現状
@ 2013年4月、裁判所速記官は全国で208名になりました。
  戦後の司法の民主化の中で発足した裁判所速記官制度は、1997年の最高裁裁判官会議での養成停止決定のため、最大時825名いた速記官が大幅に減少しました。
A このため、速記官配置のなくなった地裁本庁が12庁、支部が11庁、一人配置の本庁が8庁、支部が4庁と増加しています。このままでは、いずれは裁判所から速記官がいなくなります。これは、国会が定めた裁判所の人的構成(裁判所法60条の2「各裁判所に速記官を置く」)を、最高裁が一方的に変更・廃止(最高裁による立法権侵害)することにほかなりません。
B 裁判では、民事、刑事を問わず、公判中心主義による再活性化や迅速な裁判の要請から、供述記録の早急な作成がより強く求められるようになっています。
 しかし、速記官数の急激な減少のため、訴訟当事者(本人や裁判官、検察官、弁護士)が速記録の作成を求めても、ほとんど要請に応えられない状況が広がり、その弊害が深刻化しています。
C 最高裁は、民間業者に委託する録音データの反訳(いわゆる録音反訳方式)による逐語的供述調書(書記官調書)の作成方式を導入しました。この方式は、完成までに日数がかかること、また誤字・脱字、訂正漏れ、意味不明箇所などから正確性が懸念され、審理にも少なくない影響を与えています。    
D 2008年末に当会が実施した全国の弁護士3000人を対象としたアンケート結果でも、録音反訳方式による逐語的供述調書に対しては、法廷での録音ミスや校正ミスなどによる不正確さや録音メモリーが民間業者との間でやり取りされることの危うさなど、多くの問題点が指摘されました。  
   近年も、2012年、横浜地裁で録音データの紛失、さいたま地裁で反対尋問のやり直しが行われるなどの事故が起きています。       

2 裁判員裁判での裁判記録
@ 2009年8月から始まった裁判員裁判は、法定刑の重い重大事件を対象として、一般市民が裁判官とともに審理し判断することになりました。裁判官でさえ何日も悩み抜くといわれる死刑判決も、裁判員には短期間の審理で結論を出すことが求められています。
A 裁判員の公正・的確な判断を保障するためには、法廷でのやりとりや証言内容が即時に確認できるようにすることが不可欠です。
   司法制度改革の審議当初、最高裁も即時の文字化が必要だとして、話し言葉を即時に文字化する音声認識システムの開発を進めてきました。しかし、このシステムは、話し言葉を入力手段とするため、音声の複雑性・不安定性という原理的な問題点の克服ができません。そこで最高裁は、音声認識システムの検索機能を強調し、裁判員裁判では、キーワードを入力することで、証人の証言を確認したい箇所が容易に検索できると説明するようになりました。
B 最高裁が採用した検索機能も、結局、音声の認識率が80パーセントと低く、検索システムとしての信頼性は高くありません。これまでにも、録画では一覧性や速読性がないとの指摘や、訴訟関係者に貸与されている音声認識システムでの反訳結果は、審理や訴訟準備にはほとんど利用できないとの声が上がったり、機器の不具合や操作ミスなど、多くの問題を生じています。
C 裁判所が、正確に文字化された供述記録を迅速に作成しないため、裁判員は、自分の記憶と自分の作成するメモで判断することを求められています。裁判員のなかには音声認識システムの存在を知らされずに審理・評議に臨んだり、証言内容を再確認できないまま判断せざるを得ない実態があったこと、130枚にも達するメモを取り続けたケースなどが報じられています。こうした裁判で、公正・的確な審理・評議・判決ができるのか大いに懸念されます。
D また、失聴や難聴など聴覚障がい者の「裁判を受ける権利」や「裁判員になる権利」を保障するには、バリアフリーとしてのリアルタイム速記による情報保障が不可欠です。最高裁は、手話通訳者と要約筆記者を確保するとしていますが、手話のできる聴覚障がい者は全体の約2割程度であること、要約筆記では十分な情報保障にならないことなど、聴覚障がい者に対する認識が不十分です。

3 世界と日本の速記事情
@ 今、世界の多くの国で、裁判には機械速記によるリアルタイム速記録が取り入れられています。特にアメリカでは、最高裁が速記官の養成を停止した当時約3万人だった速記者が、現在では6万人を超える数に増えています。最近では韓国、中国などでも制度化されていますし、ハーグの国際刑事裁判所でもリアルタイム速記が活用されています。
A 日本では、速記官の養成停止策が示されるのと相前後して、多くの裁判所速記官が知恵と力を結集して、リアルタイム速記システムを開発・改善してきました。同システムは速記録の迅速な作成に大きく寄与しています。
 現状では約95%の裁判所速記官がコンピュータ内蔵の米国製電子速記タイプライターを自費で購入し公務の効率化を図っています。本来であれば、最高裁が国の予算で確保しなければいけない効率機器について、自費で購入させるなどの負担を裁判所速記官に強いています。

4 裁判記録のあるべき姿
   民事、刑事はじめ、自己の権利の実現や権利擁護、事件・事故の真実解明や刑罰権の的確な行使、あるいは親族・相続など多くの事件について裁判所での解決が求められています。当事者が訴訟準備を十分に行い、公正・迅速な裁判を実現することは憲法上の要請です。そのためには、公正で客観的かつ迅速な裁判記録の作成が不可欠です。世界基準となっているリアルタイム速記システムについても、裁判所速記官の増員や機器の確保など態勢が整備されれば日本でも実現可能となっています。

5 速記官養成再開を求める動き
  最高裁に対しては、これまでも日本弁護士連合会はじめ単位弁護士会(東京、埼玉、静岡、栃木、大阪、和歌山、兵庫、奈良、大分、宮崎)や市民団体から養成停止に反対し養成再開を求める意見書や声明が出されています。国会でも毎年のように法務委員会で審議されるなどしてきましたが、最高裁は養成再開に応じていません。

6 さいごに
 公正・迅速な裁判を受ける権利の保障は、憲法上の要請です。裁判所法上も、
  口頭主義・弁論主義を原則とする公判廷での供述記録は、速記録であることが基本とされています。そのため法60条の2にも裁判所速記官制度が設けられています。最高裁が、裁判所法を無視して一方的に速記官制度を事実上廃止することは許されません。
   裁判所から速記官がいなくなれば、迅速に作成される公正・客観的な記録なしに審理・評議・判断することになります。近時の冤罪・再審事件をみても、公正で客観的な供述記録の作成が不可欠なことは明白です。
 日本弁護士連合会および各単位弁護士会におかれましては、法廷等での供述記録(速記録)作成の規則化や速記官の執務環境の整備(電子速記タイプライターの官支給等)などを最高裁や貴会と対応する裁判所に要請してください。     以 上
添 付 資 料

@ 日弁連・単位弁護士会の声明・意見等(まとめ)
A 弁護士アンケート
B 全国速記官配置図(2013年4月現在)
C 衆議院・参議院法務委員会の各附帯決議
D 日本共産党・井上哲士議員の質問(2012年3月28日法務委員会)
E 速記官制度を守る会ニュース



posted by sokkikan at 13:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 今日の記事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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