全国の裁判所では速記官の減少が続いていますが、では速記官立ち会いの要請が減っているのかと言えば、そうではないという話です。
刑事事件は、裁判員裁判をはじめ、争いがあって、正確で素早い速記録を求められる事件への立ち会いを求められることが多く、期待に応えるため各地の速記官が奮闘していることは、今までもお伝えしてきました。
一方、民事事件のことが忘れられがちになりますが、ある裁判所では、速記官が刑事部から民事部へシフトされ、当初、その人数に見合うだけの仕事があるだろうかと心配したほどなのに、毎日毎日立会いに追われるほどの要請があり、余りの多さに要請を断ることもしばしばだという実態があるということです。
民事全体としては事件数は減少しているようですが、労働部と交通部の事件が非常に増えているのです。
2008年以来の不況で、派遣労働者が首切り、雇い止めに遭い、労働部では地位保全や退職金、休業補償などを求める事件が非常に多くなり、以前に比べ、倍近い速記要請がきています。
また、交通部についても、多くの事件が簡裁から地裁へ送られるため、部では係を増やして対応に追われ、その結果、速記の要請量も格段に増えています。
第一線で法廷に臨んでいる速記官は、「労働事件、交通・労災事件、さらには知的財産事件と、速記録を求める事件がこんなにもあり、裁判官や弁護士、当事者からも是非速記録をと言われるたび、年々減っていく私たち速記官が、いつまでこの要請に応えられるのだろうかという不安でいっぱいになります。一日も早く速記官の要請が再開されることを心から願います。」と訴えます。この現場の声が、なぜ最高裁に届かないのでしょうか。