2010年10月13日

弁護士の皆さんに「守る会」からのお願い(その2)

前に、全国的な取り組みとして掲載しました件、9月から10月にかけて、さいたま弁護士会、日弁連、東京弁護士会、第二東京弁護士会、第一東京弁護士会、福岡弁護士会、盛岡弁護士会(人権擁護大会に合わせて)に要請を行いました。

具体的には、証拠調べに裁判所速記官の立会を要請してくださることを通じて、速記官の養成再開に向けた取り組みを訴えております。
これから後も各地の単位弁護士会への訪問、要請行動が続きます。

その際、日弁連あて、並びに単位弁護士会に以下の要請文をお渡ししています。皆さまのご支援・ご協力お願いいたします。

日弁連あてのもの

                               2010年9月

日本弁護士連合会 御 中
                                            
       裁判所速記官制度を守り、司法の充実・強化を求める会
                   【
http://www3.sokkikan.coco.jp/ 】
            会 長  鶴 見 祐 策(東京弁護士会所属)
                                       
    証拠調べに裁判所速記官の立会を要請してください
               〜速記官の養成再開に向けて〜

                              お 願 い の 趣 旨

1 最高裁当局に対し、証拠調べには速記官を立ち会わせるよう要請してください。
2 速記官の養成再開を最高裁当局に働きかけてください。
3 裁判員法施行から3年後に定められている制度「見直し」検討作業に向けて、速記官養成再開の意見を法務省等にあげてください。
4 速記官の養成再開に向けて、組織的・継続的なとりくみを検討してください。
 
                              お 願 い の 説 明
                                       
              別紙「速記官制度をめぐる経過と問題」に記載しました。
                                       
                          速記官制度をめぐる経過と問題
                                       

1 法廷速記の現状
@ 2010年4月時点で、裁判所速記官は全国で240名になりました。
  戦後の司法の民主化の中で発足した裁判所速記官制度は、1997年の最高裁裁判官会議での養成停止決定のため、最大時825名いた速記官が大幅に減少しました。

A このため、速記官配置のなくなった地裁本庁・支部が18庁、1名配置となった本庁・支部が13庁に増加しています。このままでは、いずれは裁判所から速記官がいなくなります。これは、国会が定めた裁判所の構成(裁判所法60条の2「各裁判所に速記官を置く」)が、最高裁によって一方的に変更・廃止(最高裁による立法権侵害)させられることになるということです。

B 裁判では、民事、刑事を問わず、公判中心主義による再活性化や迅速な裁判の要請から、供述記録の早急な作成がより強く求められるようになっています。
  しかし、速記官数の急激な減少のため、訴訟当事者(本人や裁判官、検察官、弁護士)が速記録の作成を求めても、ほとんど要請に応えられない状況が広がり、その弊害が深刻化しています。

C 速記録に代わるものとして導入された民間業者に委託する録音テープ起こし(いわゆる録音反訳方式)による逐語的供述調書(書記官作成調書)は、完成までに日数(通常で7日以上、最短でも2日以上)がかかること、誤字・脱字、訂正漏れ、意味不明箇所が目立つなど審理にも少なくない影響を与えていると思われます。2008年末に当会が実施した全国の弁護士3000人を対象としたアンケート調査結果でも、録音反訳方式による供述調書に対しては多くの問題指摘がありました。


2 裁判員裁判での裁判記録
@ 2009年8月から始まった裁判員裁判は、法定刑の重い重大事件を対象として、一般市民が職業裁判官とともに審理し判断することになりました。プロの裁判官でさえ何日も悩み抜くといわれる死刑判決も、裁判員には数日間の審理で結論を出すことが求められています。

A 裁判員の公正・的確な判断を保障するためには、法廷でのやりとりや証言内容が即時に確認できるようにすることが不可欠です。最高裁は、証言を確認するためとして音声認識システムの検索機能を採用し、証人の証言をデジタルデータで保存し、必要なときはキーワードなどを入力することで確認したい箇所が容易に確認できると説明しています。

B しかし、このシステムは誤変換も多く正確な記録にならないことや、DVDでは一覧性や速読性がなく、審理や訴訟準備には利用できないとの報告があったり、さらには操作の複雑さ、機器の不具合などから録音録画ができず尋問をやり直したケースがあったことなど多くの問題点が生じています。
  裁判所が正確で迅速な文字化された供述記録を作成しないため、裁判員は、自分の記憶と自分の作成するメモしか頼れない状況になっています。裁判員のなかには音声認識システムの存在を知らされずにいたり、証人の証言内容を再確認できないまま判断せざるを得ない実態があったこと、130枚にも達するメモを取り続けたケースなどが報じられています。こうした裁判で、公正・的確な審理・評議・判決ができるのか大いに懸念されます。

C また、聴覚障がい者の「裁判を受ける権利」や「裁判員になる権利」を保障するには、バリアフリーとしてのリアルタイム速記による情報保障が不可欠です。最高裁は手話通訳者と要約筆記者を確保するとしていますが、手話のできる聴覚障がい者は全体の約2割程度であること、要約筆記では十分な情報保障にならないことなど、聴覚障がい者に対する認識の不十分さを露呈しています。


3 世界と日本の速記事情
@ 今、世界の多くの国で、裁判には機械速記によるリアルタイム速記録が取り入れられています。特にアメリカでは、最高裁が速記官の養成を停止した当時約3万人だった速記者が、現在では6万人を超える数に増えています。最近では韓国、中国などでも制度化されていますし、ハーグの国際刑事裁判所でもリアルタイム速記が活用されています。

A 日本では、速記官の養成停止策が示されるのと相前後して、多くの裁判所速記官が知恵と力を結集して、リアルタイム速記システムを開発・改善してきました。同システムは速記録の迅速な作成に大きく寄与しています。
  現状では95%の裁判所速記官がコンピュータ内蔵の米国製速記タイプを自費購入して使用しています。本来であれば、最高裁が国の予算で確保しなければいけない公務に使用する効率機器を自費で購入するなどの負担をしています。


4 裁判記録のあるべき姿
@ 民事、刑事はじめ、自己の権利の実現や権利擁護、事件・事故の真実解明や刑罰権の的確な行使、あるいは親族・相続など多くの事件について裁判所での解決が求められています。当事者が訴訟準備を十分に行い、公正・迅速な裁判を実現することは憲法上の要請です。そのためには、公正で客観的かつ迅速な裁判記録の作成が不可欠です。

A 世界基準となっているリアルタイム速記システムについても、裁判所速記官の増員や機器の確保など態勢が整備されれば日本でも実現可能となっています。


5 速記官養成再開を求める動き
  最高裁に対しては、これまでも日本弁護士連合会はじめ単位弁護士会(埼玉、栃木、大分、大阪)から養成停止に反対し養成再開を求める意見書や声明が出されています。国会でも毎年のように法務委員会で審議されるなどしてきましたが、最高裁は養成再開に応じていません。


6 さいごに
  裁判所から速記官がいなくなれば、公正・客観的な記録なしに審理・評議・判断することになります。近時の冤罪・再審事件においても、公正で客観的な記録が不可欠なことは明白です。公正で客観的な記録の存在は、なによりも国民の公正・迅速な裁判を受ける権利を保障するものです。

  お願いの趣旨記載のとおり、日本弁護士連合会および各単位弁護士会が、対応する裁判所当局に対し、裁判記録として速記録の確保を要請していただくことで、速記録の需要を改めて裁判所当局に認識させることが重要だと考えています。
  貴会において速記官の養成再開に向けたとりくみを重ねてお願いいたします。

                                                                    以  上
 
単位弁護士会あてのもの

                                                        2010年9月
単位弁護士会 御 中
                                            
        裁判所速記官制度を守り、司法の充実・強化を求める会
                    【
http://www3.sokkikan.coco.jp/
           会 長  鶴 見 祐 策(東京弁護士会所属)


                証拠調べに裁判所速記官の立会を要請してください
                    〜速記官の養成再開に向けて〜
                            お 願 い の 趣 旨

1 貴会の対応する裁判所当局に対し、証拠調べには速記官を立ち会わせるよう要請してください。
2 貴会の会員弁護士に対し、裁判体に前項の要請をするよう周知してください。
   (同封の会員宛要請書、速記官立会要請書(記載例)の配布にご協力ください)
3 速記官の養成再開を貴会の対応する裁判所当局に働きかけてください。
4 裁判員法施行から3年後に定められている制度「見直し」検討作業に向けて、速記官養成再開の意見を法務省等にあげてください。
5 速記官の養成再開に向けて、組織的・継続的なとりくみを検討してください。
 
                              お 願 い の 説 明
                                       
              別紙「速記官制度をめぐる経過と問題」に記載しました。

 (別紙は日弁連あてと同じ内容なため、掲載は省略します。)




posted by sokkikan at 19:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 今日の記事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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