2010年07月07日

聴覚障害者が原告の裁判で字幕表示・神戸地裁民事部

7月6日、神戸地裁で障害基礎年金不支給の取り消しを求めて提訴していた裁判の原告本人尋問がありました。

この尋問にあたり、原告代理人は速記官の立ち会いによって字幕表示を裁判所に求めていましたが、裁判所から、速記官の職務は裁判の内容を記録するためにあり、本人の手助けのための通訳とは異なる、というような理由で断られたとのことで、リアルタイム速記によって字幕表示ができるワードワープ社がこの依頼を受けることとなりました。

法廷で「はやとくん」によるリアルタイム字幕がスクリーンに表示される、この様子を見届けたようと、花子は神戸地裁に行ってきました。

10:30開廷。今回は入力者と出力者(校正含む)2人によるリアルタイム速記で、元速記官のOさん、Nさんが担当しました。

字幕表示のスクリーンは原告の真横状態で立てられていました。原告は正面の質問者の様子から質問が終わったのを悟り、横のスクリーンの文字を読んで答えるという具合にスムーズにやり取りが進行していました。

タイムラグは1秒程度、完璧な字幕表示でした。

そこに突然、裁判長から「技術者は答えは打たないこと。質問が聞こえないということで許可したことだから守ってください。」との注意。
すかさず原告代理人が「それが何か支障がありますか。支障がなくてもですか。」と異議を唱えましたが、「支障がなくても、約束ですから。」とにべもありません。

やむなくここからは問いのみの字幕表示となりました。
でも速記者の習性ですよね、つい耳に入った本人の言葉を打ってしまって、あわてて表示したものを消すという、なんとも不自然なことも起こってしまいました。

傍聴席にいる者にとっては、本人さんの背中しか見えないし、耳が聞こえなかったことで受けた幼いころのつらさや、学校生活、結婚してからの子育ての苦労など涙ながらに話すのを聞き取るのは困難でした。
また、傍聴席には聴覚に障害のある人もおられ、スクリーンの見えない左側で手話通訳、中央前列でノートテイクがされていましたが、こんな裁判なら傍聴席に向けてもう一つスクリーンが用意されていればと、市民に開かれたはずの裁判所、こんな場面でも生かしていただきたいと切に思ったことでした。

原告側の質問のあと、被告代理人からも質問があり、最後に左陪席が結構長く、更に裁判長も聞きました。

約束どおり裁判官の質問だけの字幕表示でしたが、裁判官には本人の答えが聞き取りにくかったようで、例えば本人の「中途失聴者」という発言について、もう一度と促し、再度本人が言った「中途失聴者」をOさんが打って表示すると、「ああ,中途失聴者」とつぶやく場面もありました。また、何段の音が言いにくいのですか、という質問に対して、本人は「い段」とか、幾つか例を挙げて言ったようですが、真正面の裁判官は2回も聞き直していました。傍聴席ではとても聞き取ることはできませんでした。

原告代理人は「最後に裁判所に対して言っておきたいことはありますか」と。答えて「今まで法廷での裁判官・弁護士・社保庁のやり取りが全く分からなくて悲しい気持ちでした。今日はスクリーンに出してもらってありがとうございました。」と述べられました。

この心からのお礼の言葉、裁判所はどう聞いてくださったでしょうか。

最初から、裁判所が速記官を立ち会わせてリアルタイム速記で字幕表示していれば、こんな悲しい気持ちを起こさせずにすんだでしょうし、裁判を受ける権利の実質保障と司法サービスの実現ができました。原告の費用負担は無用なものでした。

更に裁判長は、調書作成には1カ月半くらいかかると言っていました。民間委託の録音反訳するのかどうか分かりませんが、なんだか裁判所、二重三重の無駄をしているぞ、と叫びたくなる気持ちです。

(新聞記事は提訴を報じる2009年5月16日付けのもの)

毎日新聞記事.jpg





posted by sokkikan at 11:14| Comment(1) | TrackBack(0) | 今日の記事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
この訴訟、原告の訴えが実ったというニュースです。神戸地裁は12日、不支給とした国の処分を「診断書がなくても障害の程度を認定できる」として取り消す原告勝訴の判決を出しました。
リアルタイム字幕を利用しての原告本人尋問、幼いころから聴力が低下し、その後の進行状況とともにあった生活上の努力、苦労を具体的に法廷で話すことの手助けができました。
「はやとくん」による字幕表示がお役に立ててよかったです!
Posted by 花子 at 2011年01月13日 09:33
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