2014年07月26日

近畿弁護士会連合会「裁判所速記官の養成再開及び活用を求める理事長声明」発出!

近畿弁護士会連合会(近弁連)は2014年7月24日付けで標題の理事長声明を発出されました。
http://www.kinbenren.jp/declare/index.html
近弁連傘下の6弁護士会はそれぞれ同様の趣旨の意見表明を既に出されており、それはこの欄でも紹介しているところですが、それらをまとめる立場にある近弁連が、このたび理事長声明を出されたこと、花子は嬉しさいっぱいです。力強い援軍を得ることができました。
以下に全文を掲載します。全国の皆さま、引き続きともに頑張りましょう!

裁判所速記官の養成再開及び活用を求める理事長声明

1 裁判所速記官制度は、証言・供述調書の正確性や公正性を担保するとともに、迅速な裁判の実現にも資するものであり、裁判に必要不可欠な制度である。裁判所法第60条の2第1項も、「各裁判所に裁判所速記官を置く」と規定し、各裁判所に裁判所速記官を配置することを法律上義務づけている。
ところが、最高裁判所は、1998(平成10)年度から、裁判所速記官の新規養成を停止した。そのため、最大時825名いた裁判所速記官は、2014(平成26)年4月1日現在で204名にまで減少し、大阪地方裁判所管内で24名、神戸地方裁判所管内で8名、京都地方裁判所管内で4名、奈良地方裁判所管内で1名、大津地方裁判所管内で2名、和歌山地方裁判所管内で3名となっている。

2 現在、最高裁判所は、裁判所速記官による速記録に代わるものとして、民間業者に委託した録音反訳方式を導入している。しかし、録音反訳方式では、調書の完成までに日数がかかり、法律上の用語などに民間業者が通じていないため、誤字・脱字、訂正漏れ、意味不明箇所が目立つなどといった問題点が指摘されている。そのため、審理に支障を生ずる場合も存在する。しかも、民間業者に委託することは、情報管理の観点からも問題がある。

3 2009(平成21)年5月21日から、一般市民が裁判員として刑事裁判に参加する裁判員制度が開始され、一定の重罪事件につき一般市民が職業裁判官とともに事実認定や量刑判断を行っているが、裁判員の公正・的確な判断を保障するためには、法廷でのやりとりや証言内容が即時に確認できることが必要不可欠である。
最高裁判所は、ビデオ録画とコンピューターの音声認識を組み合わせ、特定の言葉を手掛かりに証言・供述を検索できるようにして、裁判員裁判の評議に対応させているが、このシステムは、音声認識の精度が低く、文字化が著しく不正確であるため、証言・供述の検索すらも困難である。このような状況では、適正・公正な審理や評議に基づく正しい事実認定を行うことが可能であるのか、極めて疑問と言わなければならない。

4 これに対して、裁判所速記官による速記録は、コンピューターを組み込んだ速記機械と「はやと君」という反訳ソフトにより、尋問を直ちに文字化して画面上に表示することが可能なまでに進歩している。これにより、尋問を実施したその日のうちに、文字化された証言・供述調書を作成することが可能となっている。文字化された逐語録調書は裁判員にも閲覧が容易であり、一覧性も高く、正確に再現された証言・供述調書を元に、適正・公正な審理や評議が期待できる。
しかも、ビデオとコンピューターの音声認識では、発言が重なったり、不明瞭な発音のために、証言・供述内容が理解できない場合がありうるが、裁判所速記官による速記録の場合には、裁判所速記官が尋問に立ち会ってその場で証言・供述を確認できるので、内容が確認できないことはほとんどない。
連日的開廷に対応しなければならない訴訟当事者にとっても、証言・供述の内容をその日のうちに文字化した調書で確認できれば、次の訴訟準備のために非常に有益である。
したがって、裁判員裁判における尋問の際には速記官を活用し、訴訟関係者が即時に速記録を閲覧等できるようにするべきである。

5 また、聴覚障がい者の裁判を受ける権利や裁判員になる権利を保障するためには、速記による情報保障が必要不可欠である。最高裁判所は、手話通訳者と要約筆記者とで対応するとしているが、手話のできる聴覚障がい者は全体の約2割程度であること、手話や要約筆記では十分な情報保障にならないことなどの問題がある。速記官によるリアルタイム速記を活用すれば、聴覚障がい者は証言・供述を直ちに正確に知ることができ、聴覚障がい者の裁判を受ける権利や裁判員になる権利の保障に資することは明らかである。実際に、神戸地裁では、聴覚障がい者の本人尋問で、リアルタイム速記が活用されたことがある。

6 現在、世界の多くの国では、裁判に、機械速記によるリアルタイム速記を採用している。アメリカでは、我が国の最高裁判所が裁判所速記官の養成を停止した当時約3万人であった速記者が、現在では6万人を超える状況にある。ハーグの国際刑事裁判所においてもリアルタイム速記が活用されている。
コンピューターを組み込んだ速記機械については、アメリカの会社が日本語用の機械を提供しており、速記機械の確保には問題がない。
このように世界標準となっているリアルタイム速記は、裁判所速記官の増員と研修態勢さえ整備されれば、日本においても容易に実現できるものである。最高裁判所の裁判所速記官養成停止の方針は、このような世界の流れに逆行するものであって直ちに転換されなければならない。

7 よって、当連合会は、最高裁判所に対して、速やかに裁判所速記官の養成を再開し、広く裁判所速記官を活用することを、強く求める。

2014年(平成26年)7月24日
近畿弁護士会連合会
理事長 藪 野 恒 明

posted by sokkikan at 08:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 今日の記事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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